大植英次と大阪フィルハーモニー交響楽団が奏でる、究極のプログラム
昨年の『近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2021』では、コロナの関係でオーケストラの演奏は無かったのですが、今年は大阪フィルハーモニー交響楽団と京都市交響楽団が登場し、名曲の数々を聴かせてくれます。
中でも大植英次さんは、初回以降ずっと大阪フィルと共に出演されていて、今では音楽祭の顔。大阪フィルの桂冠指揮者という事ですが、指揮する機会は多くないだけに、往年の名コンビを破格の料金で聴ける、またと無いチャンスなのです。
大植さんが初日に指揮するのは、ベートーヴェンの「運命」とシューベルトの「未完成」というLPレコードでは定番の組み合わせ。しかしながら大植さんが大阪フィルで「未完成」を指揮するのは今回が初めてなのだとか。いずれ何処かで演奏しようと、研究を重ね、タイミングを測って来た大植さんが、満を持しての決断!これには関係者も少々興奮気味。 「運命」の方は、2020年の音楽祭で指揮する予定だったのが、コロナで中止となった因縁の曲。その後、大阪フィルのコロナによる自粛期間明け第一弾となった2020年6月の定期演奏会、偶然にも指揮は大植さんですが、当初予定していた大編成の曲を、「運命」とベートーヴェンの交響曲第4番に変更されました。大植さんがコロナ禍での演奏を強くこだわった「運命」。まさに、ここでしか聴けない究極のプログラムなのです。
音楽祭の掉尾を飾るグランド・フィナーレは、オールスター夢の競演と云った盛り沢山の内容ですが、決してお祭り騒ぎで終わることなく、出演者一人一人の個性を引き出し、聴き手に強く印象付けるところが大植さんの真骨頂。フィナーレのレスピーギ交響詩「ローマの松」は昨年、入国時の隔離期間が確保できず、キャンセルとなった演奏会でのメイン曲。大植さんと大阪フィルが最も得意とする曲の一つが、びわ湖ホールで実現します。皆さまも、オーケストラが奏でるナマ音の魅力に心惹かれ、きっと癖になるはず。思いがけない所から登場する金管楽器の響きにもご期待ください。
音楽ライター 磯島浩彰