大植英次さん スペシャルインタビュー
昨年に引き続き、今年も「近江の春」に出演される大植マエストロに直撃インタビュー!熱い想いをたくさん語ってくださいました。
「ラフマニノフ作曲 ピアノ協奏曲第3番」とても楽しみにしています。作品への思いをお聞かせください。
名曲ですね。彼はソビエト連邦の時代になっても、ロシアをずっと表現していた。20世紀でトップ3に入る最高のメロディーを書ける人ですね。白夜に砂浜で二人が手をつないで歩いている姿が目に浮かんでくるんです。ゆったり時間をかけてはぐくんだ、言わずともわかっている「大人の愛」を感じてほしい。
ちなみに、ラフマニノフは祖父に教わってピアノを始めたピアニストでもあるのですが、ピアノ王国・ロシアをつくったのはロシア人ではなく、アイルランドの調律師ジョン・フィールドだったんです。ショパンで知られるノクターンという言葉を作ったのもフィールドで、ラフマニノフの祖父も学んだそうです。ロシアのすばらしさを世界に広げるラフマニノフの音楽の源流ともいえるのです。
私が教わったバーンスタインの音楽院時代の同級生に、ダラス交響楽団の指揮者だったウォルター・ヘンデルという人がいて、彼の先生が指揮し、ラフマニノフが弾いたことがあったそうです。3番のテンポで意見が分かれた時に、ラフマニノフが音を立ててピアノを閉じて、「これは僕の曲だ!だったら僕はやらない」と。それで、3番だけヘンデルさんが弾くことになってしまったそうです。ヘンデルさんから聞いたんですが、ラフマニノフの意志の強さ、自分の曲を大切にする姿勢が伝わってくる話ですよね。ホロヴィッツがカーネギーホールで弾いたのも、有名なピアノ協奏曲第2番ではなく「第3番」。
やっぱり、(ラフマニノフの3番は)名曲中の名曲だと思う。聴けば聴くほど味が出る。びわ湖ホールの大ホールで聴いてもらって、みなさんに「よかったな」と思ってもらいたい。
「近江の春」では欠かせない存在の大植マエストロ。
(びわ湖ホールがある)まず場所がいい。湖が見えるところで演奏できるのは奇跡。(大ホールは)オペラができるステージになっているし。びわ湖ホールで演奏するのをいつも楽しみにしている。
「近江の春」をプロデュースする沼尻竜典さん(びわ湖ホール芸術監督)は、日本で数少ない純粋な音楽家で、「良いものは良い」と言える人。彼ほどビジョンのある人はいないんじゃないかな。僕は彼を本当に尊敬している。「近江の春」、一緒につくっていきたいと思っています。