プーランク作曲 オペラ『声』LA VOIX HUMAINE ━━中村敬一

 舞台には主人公の「彼女」(砂川涼子)と一台の「電話」しかいない。そして電話の向こうにはもう一人の人物が! この電話の向こう側の「声」は、もちろん観客には聞こえてこない。その相手は間違い電話の主であったり、交換手であったり、そして彼女の「彼」であったり。これを担うのはオーケストラ(京都市交響楽団)。「彼」の声を担う雄弁な音楽(指揮:沼尻竜典)は優しさと狡猾さを表す。

 「彼女」と「彼」は別れの時を迎えている。会話は優しい嘘と残酷な真実、本音と虚飾の間を彷徨う。スマホの現代では無くなったが、突然、通話が途切れたり、混線したり、交換台を呼び出したり。こんな頼りない電話の状態がますます「彼女」の不安と孤独をあおる。この電話の向こうの「声」のオーケストラが色彩豊かであればあるほど、彼女の心の痛みと傷が深まるのだ。 

 台本はジャン・コクトーが1930年に初演した戯曲。コクトーは、詩人、小説家、評論家、戯曲家、脚本家、バレエ制作者、オペラ制作者、映画制作者、監督、俳優、画家、舞台装置家、魔術師、軽業師。「20の顔を持つ男」と称された。親交のあった人々にはピカソ、ストラヴィスキー、ボーボワール、ニジンスキー、ダリ、ディオール、ラディゲ、シャネル、ローラン・プティ、サガン、チャップリン、ブラック、モディリアニ…… そしてジャン・マレー。この多才で広い交友関係から生まれた捉えどころの無い天才コクトーの感性は、シュールレアリスムと一線を画した。フランス6人組(Les Six)のプーランクも無調の音楽とは距離を置き、この二人の出会いは独特の世界を作り出す。二人のエスプリの結晶とでも云うべき「声」を「近江の春」にお届けしたい。

中村敬一(「声」公演 舞台構成  )

ジャン・コクトー

沼尻竜典オペラセレクション  プーランク作曲 歌劇『声』 (全1幕/演奏会形式)

公演番号【27-L-2】

4月27日(土)15:00~15:50 大ホール

沼尻竜典オペラセレクション

プーランク作曲 歌劇『声』(全1幕/演奏会形式/フランス語上演・日本語字幕付)

砂川涼子(ソプラノ)/京都市交響楽団

沼尻竜典(指揮)

中村敬一(舞台構成)

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