「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」に寄せて―江川紹子

「近江の春」の楽しみは、プログラムが発表された時から始まります。

 まずは、自分の日程を見て行ける日を確認し、演奏会をどう組み合わせるかを考えます。なにしろ、大中小と3つのホールに加え、ロビー、さらには屋外や他会場でも、魅力的なプログラムがいっぱいなので、スケジュールを決めるのは結構大変。だけど、それがまた楽しいのです。

 この音楽祭の特徴は、超一流の演奏が、超お買い得の値段で提供される、というダブル「超」にあります。 

 昨年の私は、吉野直子さんのハープ独奏から始まって、沼尻竜典芸術監督が指揮する京都交響楽団のオープニングコンサート、ミュンヘン国際音楽コンクール一位の「葵トリオ」によるピアノ三重奏、バリトン大西宇宙さんのリサイタル、オペラ『声』(石橋栄実さん、見事でした!)、コンスタンチン・リフシッツのピアノでゴルトベルク変奏曲を全曲、そして最後はモーツァルトの《レクイエム》で締めました。

 気になるチケット代は、全部で1万1000円!信じられます?   

 それ以外にも、メインロビーでフルートやびわ湖ホールが誇る「四大テノール」による無料の演奏も楽しみました。これだけてんこ盛りに詰め込むと、聴くのも結構体力がいります。本当は、日程の都合さえつけば、予算と体力を2日間に分散し、余裕をもった予定を組みたいところです。

 この音楽祭、というか、びわ湖ホールの魅力のもう1つは、出演者のみならず、スタッフの方々にもイベントを成功させようという一体感と、音楽への愛情、観客に対する親切心がみなぎっていることです。 

 昨年のかがり火コンサートは、湖畔で行うことになっていました。直前の天気予報で寒波襲来が伝えられると、演奏者と観客のために、スタッフ総出でスーパーやドラッグストアを駆けずり回り、使い捨てカイロを買い集めた、とのこと。私が伺った日は、残念ながら強風のために会場が室内に移されましたが、湖畔で実施された翌日には、そのカイロが役立ったことでしょう。

 素晴らしい音楽で満たされ、スタッフの心配りに和む――そんな「近江の春」が、私は大好きです。今年も楽しみですね!