「ケーカンゲージツカントクの部屋」沼尻竜典×石井楓子

びわ湖ホール桂冠芸術監督・沼尻竜典が石井楓子さん(ピアノ)に直撃インタビュー!

私の感性に訴えかけてくる作曲家、大好きな作品を並べたらこうなりました。
--- びわ湖ホールには4回目のご登場だそうですね。
はい。阪マエストロの指揮で、2020年に日本センチュリー交響楽団とベートーヴェンの『皇帝』を弾かせていただいて以降、ご縁が続いています。本当に名誉なことです。
--- 今回は音楽祭ということで、石井さんのキャラクターがギュッと詰まったプログラムに感じられます。石井さんはドイツ・デトモルトの「ブラームス国際コンクール」と、ノルウェーの「グリーグ国際コンクール」で第1位を取っていらっしゃいます。
特別意識したというわけではないのですが、今、私の感性に訴えかけてくる作曲家がこの3人の作曲家で、大好きな作品を並べたらこうなりました。ノルウェーなど、ヨーロッパでのリサイタルでも演奏しています。私って自分が寒さに強いせいか、寒い地方出身の作曲家が好きみたいで(笑)。
グリーグに関しては最近、舘野泉さんが「グリーグの作品の中にはヴェルディのような情熱がある」とおっしゃっていたのを拝読して、とても納得しました。岩だらけのノルウェーの風景ですが、清涼な空気感に加えて、大地の中に隠されたマグマのようなものも感じます。
ブラームスも北方のロマンティシズムといえると思います。ピアノソナタ第1番には「ピアノを鳴らし切る快感」があるんですが、オクターヴや跳躍が多くて技巧的にも難しいので、音楽祭のテーマである『挑戦』にもピッタリだと思いました。
--- その合間に演奏されるベートーヴェンの『失われた小銭への怒り』って、すごいタイトルですね(笑)
そうなんです。でもタイトルは本人のものではなく、誰かが後から自筆譜に書き入れたようです。お金に悩んでいたベートーヴェンらしいですよね。今回は、音楽室の肖像画のような堅苦しさのないベートーヴェンを弾いてみたいと思いました。
--- 濃いリサイタルになりそうです。
私が留学初期に住んでいたケルンは、ベートーヴェンの生まれたボンのすぐ近くです。コンクールのあと、ブラームスが生まれた北ドイツや、グリーグの故郷ノルウェーも頻繁に訪れるようになりました。今回のリサイタルでは、そこで流れている空気を皆様にお届けできたらと思っています。
聞き手:沼尻竜典(びわ湖ホール桂冠芸術監督)