鈴木優人が日本センチュリー交響楽団 とのコンサートに用意した最強のプログラム

阪哲朗芸術監督の下、新たなスタートを切ったびわ湖ホール。春の大型連休の前半を彩る恒例の“音楽祭”が、“びわ湖の春 音楽祭として装いも新たにスタートする。今回のテーマである「ウィーンの風」を感じるプログラムがずらっと並んだ 4 月最後の2日間。豪華ラインナップの中から、ぜひ皆様に紹介したいのは、指揮者にして鍵盤楽器奏者、作曲家、プロデューサーなどマルチに活躍する鈴木優人が、日本センチュリー交響楽団(以下センチュリー)を指揮するコンサート。(4/29 15:30 大ホール )

2022年1月8日 びわ湖ホール 名曲コンサート より

両者の組み合わせは、2022 年1 月8日、びわ湖ホール名曲コンサートで実現している。鈴木は J.S. バッハの『ブランデンブルグ協奏曲 第 5 番』とシューベルト の 交響曲 第 8 番『ザ・グレイト』という 2 曲を通して、時代や編成、曲調など対比の妙を強調し、見事に初対面のセンチュリーから新鮮かつ精緻なサウンドを引き出してみせた。

 

鈴木優人

今回、 鈴木優人が用意したのは、いかにも鈴木らしい センス に溢れたプログラム。1 曲目は、彼が得意とするバッハの『音楽の捧げもの』より“ 6 声のリチェルカーレ を、新ウィーン学派のウェーベルンによるオーケストラ編曲版で。そして、腕利き揃い の センチュリー管楽器奏者による、リヒャルト・シュトラウス『 13 の管楽器によるセレナーデ』。その曲の編成のベースとなる『グラン・パルティータ』を作曲したモーツァルトの交響曲第 40 番をメインに据える 。モーツァルトの交響曲第 40 番は、甘く切ない魅惑の旋律で人気の曲だが、全交響曲の中で 2 曲しか無い短調の曲。鈴木は敢えて余韻のようなモノを残した形で音楽祭の2日目に繋げようと、この曲を選んだのでは無いか。その結果、2日目のオーケストラコンサートは、モーツァルトのモテット『踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ』から、ファイナル・コンサートではモーツァルト のピアノ協奏曲第 21 番、交響曲第 36 番『リンツ』という 2 曲のハ長調で大団円を迎える。 オーケストラの特徴や編成だけでなく、音楽祭の流れまでをも見事に計算し尽くしたプログラムに、鈴木優人の本気度を見た。このコンサート、聴き逃す訳にはいかない。

期間中は 4 年ぶりにキッチンカーも登場し、ちょっとした飲食も可能。そして、ホールの前に広がる日本一の琵琶湖が、貴方の心を癒してくれるはず 。4月最後の2日間、音楽で溢れる “びわ湖の春 音楽祭 ” を満喫したい。

音楽ライター 磯島浩彰